作り方・活用

3Dプリント後の仕上げ|サンディング・塗装の基本手順

更新: 佐々木 美咲

3Dプリント品をきれいに塗りたいなら、仕上がりを決めるのは色そのものより、むしろその前の下地処理です。
PLAを中心に、PETG・ABS・レジンにも応用できるように、積層痕やサポート跡をサンディング、サーフェイサー、塗装の順で無理なく整える流れを、初心者にも追いやすく整理します。
筆者も初めてPLAのフィギュアを仕上げたとき、無色のままでは見えなかった細い傷がサーフェイサーの1回目で一気に浮き上がり、#600で当て直す大切さを痛感しました。
基本は手研磨を軸に#400から#600、#1000へと段階的に進め、サーフェイサーは20〜30cmほど離して薄く吹き、色は2〜3層で重ねてトップコートで整えるのが失敗しにくい進め方です。
実際に試してみたところ、PETGのケースはPLAよりエッジが欠けにくく、#400で形を出しやすい一方、塗料を厚く乗せると輪郭が甘く見えやすい素材でした。
素材ごとの扱いやすさは違っても、PLAは無難に進めやすく、ABSは加工しやすくてアセトン平滑化も選べ、PETGは溶剤相性に注意、レジンは洗浄と下地確認が鍵という軸を押さえれば、見栄えは変わります。

3Dプリント後の仕上げで、見た目はどこまで変わるか

3Dプリント品の見た目は、仕上げの段階で化けます。
特にFDM方式の造形物は、出力直後のままだと積層痕、サポート跡、わずかなバリが光を細かく乱反射させるので、形は合っていても「試作品っぽさ」が残りやすいのが利点です。
ここをサンディングとパテで整えると、面のつながりが滑らかになり、光の反射が均一になります。
この変化が大きくて、樹脂素地の少しチープに見えやすい印象が薄れ、一気に“市販品感”に近づきます。
筆者の感覚では、見た目の高級感は色より先に反射の整い方で決まります。
たとえば同じグレーでも、段差が残ったまま塗った面は光がまだらに跳ねて、近くで見るとすぐ造形品だとわかります。
逆に、積層痕を落としてエッジだけをしっかり残した面は、単色塗装でも輪郭がきれいに見えて、量産品の外装のような落ち着いた表情になります。
この差をはっきり見せてくれるのがサーフェイサーです。
下地の細かな傷や凹凸を見つけやすくし、塗料の密着も助けてくれるので、塗装工程というより「粗をあぶり出す工程」と考えたほうが実感に近いです。
筆者も最初の頃は、サーフェイサーを吹いたら思っていた以上に段差が見えるようになってショックでした。
ただ、そこでそのまま色に進まず、いったん粗い番手側に戻って整え直すと、最終のツヤが一段上がります。
ここで面を追い込めた造形物は、塗装後の映り込みまで素直になります。
特にサポートの付け根や角の欠けは、塗装だけでは隠れず、下地で詰めたほうが早くきれいになります。
実際に作業していてもこの流れがいちばん仕上がりを安定させやすいのが利点です。
塗装そのものも、単なる見た目の演出ではありません。
色をそろえて質感を整える役割に加えて、表面を擦れ、紫外線、汚れから守る層としても効きます。
展示や撮影用だけでなく、手で持つ小物やケース類ではこの差が出やすく、塗膜があるだけで表面のくすみ方が変わります。
とくに明るい色の造形物は、素地のままだと触った部分の汚れが目立ちやすいので、保護膜としての意味も小さくありません。

素材ごとに「きれいになる方法」は少し違う

ここで前提にしておきたいのが、どの素材でも同じ方法で同じように仕上がるわけではない、という点です。
PLAは手研磨とサーフェイサーの組み合わせが基本で進めやすく、ABSは同じく研磨と下地処理が軸になりつつ、アセトン蒸気による平滑化という選択肢もあります。
一方で、PLAやPETGではアセトン平滑化は実用的ではありません。
PETGは割れにくさと粘りが魅力ですが、サポート跡が見た目に残りやすく、輪郭が少し甘く見えることがあるので、面よりも境界の処理が仕上がりを左右します。
レジンはもともと積層痕が少ないぶん、洗浄不足や表面の残留物が塗装不良に直結しやすく、研磨の前段階が欠かせません。
さらに、塗料や処理剤の相性も素材ごとに見ておく必要があります。
溶剤の強い製品では、表面が溶けたり、べたついたり、ディテールが鈍ることがあるためです。
『3D-FABsの塗装記事』でも素材と塗料の組み合わせへの注意が触れられていますが、筆者もここは仕上がりだけでなく造形のシャープさに直結すると感じています。
きれいに見せるつもりの処理で輪郭が寝てしまうと、本末転倒になりやすいのが利点です。
このあとで、PLA、ABS、PETG、レジンそれぞれについて、どこから削り始めるか、どこでサーフェイサーを挟むか、どの処理が向いているかを素材別に手順で整理していきます。
見た目をどこまで変えられるかは「塗る技術」だけでなく、「その素材に合った下地の作り方」を選べるかで決まります。

3Dプリンターで作成した造形物に塗装を加えるポイント - 3D-FABsチャンネル | オリックス・レンテック株式会社 3dfabs.orixrentec.jp

まず知っておきたい下地処理の基本順序

下地処理は、やることが多く見えても、順番を固定すると一気に迷いにくくなります。
初心者の方がまず押さえたい標準フローは、サポート除去→バリ取り→粗研磨→必要ならパテ→再研磨→洗浄/粉除去→サーフェイサー→傷チェック→本塗装→トップコートです。
塗装の見栄えはこの並びを崩さないだけで安定しやすく、逆に順番を飛ばすと、あとから目立つ傷やホコリの混入で手戻りが増えます。
サポート除去は、造形時に付いた支え材を取り外して本来の形状を出す工程です。
バリ取りは、縁や穴まわりに残った薄いはみ出しやささくれを落として、後の研磨を均一にする工程です。
粗研磨は、積層痕やサポート跡の段差を大きくならす工程で、細かい番手から入らず粗い側から段階的に進めるのが基本です。
必要なら入れるパテは、深いへこみや欠けを埋めて、研磨だけでは消えない谷を整える役割があります。
再研磨は、パテの盛り上がりや粗研磨の傷を整えて、面のつながりを自然にする工程です。
洗浄と粉除去は、削り粉や皮脂を取り除いて塗膜不良を防ぐ工程で、ここで使うタッククロス(ホコリ取り布)が想像以上に効きます。
筆者は以前、このひと手間を省いたまま進めて塗面に微細なホコリをしっかり噛ませてしまい、結局塗り直しになりました。
それ以来、粉除去は見た目以上に効く、失敗を未然に止めるためのいちばん安い保険だと考えています。
サーフェイサー(下地用スプレー)は、塗料の密着を高め、細かな傷を見つけやすくし、色の発色も整えてくれる下地です。
サーフェイサー後の傷チェックは、無色の素地では見えにくかった線傷やわずかなうねりを見つけて、色を乗せる前に修正する工程です。
本塗装は、色と質感を薄く重ねて均一な見た目を作る工程で、厚吹きよりも薄塗りの積み重ねが失敗しにくい設計です。
トップコートは、表面保護とツヤ感の調整を担う仕上げの層で、完成後の触り心地や見え方を安定させます。
FDMのPLAやABS、PETGなら、研磨はまず#400→#600→#1000くらいの段階進行が扱いやすく、最初にそろえる枚数も各1枚ずつあれば十分スタートできます。
レジン系は表面状態によっては#240〜#320から入って#400〜#600で整える進め方もありますが、レジンは研磨前の洗浄が前提になります。
なお、ウェットサンディング(耐水ペーパーでの水研ぎ)は研磨粉を抑えやすく、細かい仕上げに向きます。
PETGは弾力があって欠けにくい反面、サポート跡の境界が見た目に残りやすいので、面だけでなく跡の輪郭を意識して整えると仕上がりが締まります。
作業場所も順序の一部だと考えると失敗が減ります。
塗装は屋外や塗装ブースで行うのが基本で、換気を確保し、防塵マスクニトリル手袋保護メガネを使い、火気厳禁を徹底します。
とくにスプレーや溶剤を使う工程では、机の上だけ整っていても空気の流れが悪いと作業しにくく、乾燥中のホコリも増えます。
ABSではアセトン蒸気による平滑化が選択肢になりますが、これはPLAやPETGには基本的に向きませんし、安全面でも別格に注意が必要です。
工程全体のイメージがまだ掴みにくい場合は、アイコン付きの工程フローチャートを頭の中に置くと進めやすいのが利点です。
サポート除去からトップコートまでを時系列で一列に並べるだけでも、いま自分がどこにいるのか見失いにくくなります。

必要な道具・材料チェックリスト

最初にそろえる道具は、実はそこまで多くありません。
大事なのは「全部を高級品で固めること」ではなく、工程ごとに役割が分かれた最小セットを持つことです。
筆者が初心者向けに組むなら、研磨、粉除去、下地、塗装、保護の5系統で分けます。

  • ニッパーまたは薄刃ニッパー(サポート除去用)
  • デザインナイフまたはカッター(バリ取り用)
  • 紙やすり #400 / #600 / #1000 を各1枚以上
  • 耐水ペーパー #400 / #600 / #1000(水研ぎもするなら)
  • 小型の当て木やスポンジやすり
  • パテ(深いへこみや欠けの修正用)
  • 洗浄用の柔らかい布
  • タッククロス(ホコリ取り布)
  • サーフェイサー(下地用スプレー)
  • 本塗装用の塗料
  • トップコート
  • 防塵マスク
  • ニトリル手袋
  • 保護メガネ

研磨材は、いきなり細かい番手だけを買うより、#400、#600、#1000の3段階をひとまず1枚ずつ持つほうが実用的です。
#400は形を出す役、#600は傷を整理する役、#1000は塗装前の肌を整える役として分担しやすいからです。
面が広い箱物なら消耗が早いので追加があると安心ですが、最初の一体を仕上げるだけなら各1枚からでも流れは十分つかめます。
サーフェイサーは、単に色を灰色にするためのものではなく、下地の粗を見える化するための工程として使うのがコツです。
『KUWABARA 3D PRINTの解説』でも、密着性の向上、傷の可視化、発色補助という役割が整理されています。
吹き方は厚く一度で隠すより、少し離して薄く重ねるほうが面の情報を潰しにくい設計です。

www.kuwabara-3d.com

作業環境チェックリスト

塗装や下地処理は、道具以上に作業環境の整え方で仕上がりが変わります。とくにホコリと換気は、初心者ほど先に固定しておくと迷いません。

  • 換気できる場所がある
  • 塗装は屋外または塗装ブースで行える
  • 火気のない場所で作業できる
  • 作業台に新聞紙や養生材を敷ける
  • 乾燥中にホコリが乗りにくい
  • 防塵マスクニトリル手袋保護メガネを着用できる
  • 研磨粉をすぐ拭き取れる布やタッククロスが手元にある
  • 洗浄後に十分乾かせる置き場がある

研磨だけの日でも、粉は意外と広がります。
塗装の日はさらに空中のホコリを拾いやすくなるので、作業台の周辺を先に拭いておくだけでも塗面が安定します。
レジン系は洗浄不足がそのまま塗装不良につながりやすく、FDM系は研磨粉の残りが敵になります。
素材ごとに原因は少し違っても、作業面を清潔に保つ意味は同じです。
ABSのアセトン平滑化を検討する場合は、通常の研磨や塗装以上に安全優先で考える必要があります。
アセトンは可燃性があり、換気と火気厳禁が前提ですし、ディテールも丸まりやすいのが利点です。
これは「まず覚える基本順序」の外にある応用処理で、下地処理の標準フローを安定して回せるようになってから扱うほうが整理しやすいのが利点です。

用語ミニ解説

サーフェイサーは、塗装前に吹く下地用スプレーです。
塗料の食いつきを良くし、細かな傷やうねりを見えやすくして、上に乗る色の発色も整えます。
タッククロスは、塗装前に表面の細かなホコリや研磨粉を取るための布です。
見た目ではきれいに見える面でも、これで拭くと意外なほど粉が残っています。
ウェットサンディングは、耐水ペーパーで水を使いながら研磨する方法です。
粉が舞いにくく、深い削り傷を入れにくいので、塗装前の仕上げで使いやすいのが利点です。
バリは、造形やサポート除去のあとに残る薄いはみ出しやささくれです。
ここを放置すると、サーフェイサーや塗装後に影として目立ちます。
パテは、へこみ、欠け、深い積層溝を埋める充填材です。
研磨だけで消せない谷を埋めてから削り直すことで、面のつながりを自然にできます。
トップコートは、本塗装の上に重ねる保護用の仕上げ塗膜です。
ツヤの調整だけでなく、擦れや軽い汚れから表面を守る役割も持っています。

サンディングの手順|番手の上げ方と失敗しにくい進め方

平面・エッジ・曲面の削り方

サンディングは、粗い番手から細かい番手へ順番に進めるのが基本です。
FDMの一般的な出力品なら、まずは #400→#600→#1000 の流れが組みやすく、積層痕をならしながら塗装前の肌を作りやすいのが利点です。
『KUWABARA 3D PRINTの解説』でもこの進め方が紹介されていて、実際にこの3段階を守るだけでも失敗が減ります。
ここで大事なのは、一気に番手を飛ばさないことです。
#400の傷を#1000で消そうとすると、削れているようで傷の底だけが残りやすく、結果として時間も面の乱れも増えます。
図で入れるなら、番手ごとの役割は次の対応表にすると整理しやすいのが利点です。

番手目的注意点
#240レジン系の大きめの段差・傷の修正削れが速く、面や角を崩しやすい
#320レジン系の荒整形深追いするとエッジが丸まりやすい
#400FDMの積層痕を均す初手同じ場所を押し続けると面が波打つ
#600#400の傷を整理する形を変えるより傷を整える意識が向く
#800仕上げ前の中間ならし飛ばしても進むが、曲面では入れると安定しやすい
#1000塗装前の表面調整傷消しではなく肌を整える工程として使う
#1200かなり細かい仕上げ調整下地の傷が残っていると意味が薄い

平面は、紙やすりを指でつまんで直接当てるより、当て木や硬めのブロックに巻くほうが面を崩しにくい設計です。
箱物やプレート状のパーツでこれを省くと、局所的に指圧が乗って、光が当たったときにうねりとして見えてきます。
逆に、緩い曲面はスポンジやすりやスポンジブロックが向いています。
素材の面に追従しつつ、点ではなく面で当たるので、フィギュアの頬や肩のような丸みがきれいに残ります。
エッジは、積層痕が気になるからといって平面と同じ勢いで削ると、すぐに輪郭が甘くなります。
角を立たせたい部分は形を出す場所ではなく、整える場所として扱うのがコツです。
筆者はエッジだけは最初から攻めず、#600以上で軽く当てることが多いです。
平面で十分に段差を落としておいて、角は数回なでるくらいにすると、シャープさを保ったまま表面だけ落ち着きます。
レジン系の出力品はFDMより積層感が少ないぶん、最初から細かい番手で入りたくなりますが、サポート跡や局所的な段差があるときは #240〜#320から入って、#400〜#600で整える流れのほうが早い場面があります。
ただし、深い傷やピンホールを無理に削り切ろうとすると、周囲までえぐれて面が崩れます。
爪が軽く引っかかるような傷、へこみとして見える傷は、削って消すよりパテで埋めてから削り直すほうが素直です。
削る量より埋める量のほうが少ないと判断できる傷は、その時点で埋めたほうが仕上がりが安定します。
これ、意外と知られていないんですが、曲面フィギュアは #400で整えたあと、そのまま#600へ行きたくなるところを一段クッション入れると、仕上がりがぐっと良くなります。
筆者は #500相当のスポンジで軽く全体をなじませてから#600、さらに#1000へ進めることがあり、このひと手間が入ると最終面のぬめり方がひとつ上がります。
数字の上では大差なく見えても、曲面では前の傷の向きがそろいやすくなるので、サーフェイサーを吹いたときの見え方が明らかに整います。

ウェットサンディングの是非と乾燥方法

塗装前の仕上げでは、耐水ペーパーを使ったウェットサンディングが有効です。
水を介すると研磨粉が舞いにくく、ペーパーの目詰まりも抑えやすいため、#600以降の傷整理や最終調整がとても穏やかに進みます。
乾式だと白く曇って見えた面も、水をつけながら削ると本当に残っている傷だけが見えやすくなるので、削り過ぎを防ぎやすいのが利点です。
ただし、素材によっては水の扱い方に差が出ます。
PLAは長時間ぬれた状態に置くと表面が少し頼りなく感じることがあり、筆者は短時間だけ水を使って、作業ごとにすぐ拭き取るやり方を基本にしています。
洗面器に浸けっぱなしにするより、ペーパーと表面を軽く湿らせる程度のほうが扱いやすいのが利点です。
PETGやABSでも、びしょびしょの状態でだらだら続けるより、必要なところだけ短く行うほうが工程が締まります。
乾燥は、自然乾燥に任せる前にまず水分を残さないことが欠かせません。
やわらかい布やペーパーで表面の水を押さえるように拭き、溝やディテールの奥は角に水が残りやすいので、そこで一度止まって確認します。
水が残ったまま次の番手に進むと、削りカスが泥状になって傷の見分けがつきにくくなりますし、塗装前まで引きずると密着不良の原因にもなります。
ウェットサンディングは便利ですが、研磨と乾燥をひとつのセットとして扱うと安定します。

粉除去と素地の最終確認

研磨工程で見落とされがちなのが、研磨粉の除去そのものが仕上げの一部だという点です。
表面に残った粉はただの汚れではなく、その上からサーフェイサーや塗料が乗ると小さな異物になります。
いわゆる塗装面のブツは、空気中のホコリだけでなく、削った粉の置き去りでも起こります。
粉の粒が塗膜の下に残ると、その部分だけ塗料が持ち上がり、乾いたあとにざらつきとして出ます。
筆者はこの段階で、まずブロワーで溝や凹部の粉を飛ばし、そのあとタッククロスで表面全体を軽くなでる順番にしています。
いきなり布で拭くだけだと、細かい粉が角やモールドの奥に押し込まれることがあるからです。
逆にブロワーだけでも、静電気気味の粉は薄く残ります。
2段階で取ると、指で触ったときのざらつきが減ります。
粉を落としたら、素地の最終確認は「傷があるか」だけでなく、「傷の種類がそろっているか」を見るのがコツです。
#400の深い筋と#1000の細かい曇りが同居している状態は、ぱっと見ではきれいでも塗装後に差が出ます。
光を斜めから当てて、筋の向きがバラバラに見える場所、白く曇る場所、逆に妙につやっぽく残る場所を探すと、削り残しが見つけやすいのが利点です。
つやっぽい部分は凹みとして残っていることがあり、そこを無理に追い込むより、必要ならパテで整えてから再度番手を戻したほうが面がきれいにつながります。
ここまで整っていると、次のサーフェイサー工程で「思ったより荒れていた」を減らせます。
研磨は削る工程に見えて、実際は削る、粉を取る、面を見直すの繰り返しです。
この3つを分けて考えるだけで、再現しやすい下地処理になります。

素材別の仕上げ方|PLA・ABS・PETG・レジンの違い

素材ごとに仕上げの正解は変わります。
見た目が似た積層痕でも、削れ方、角の残り方、塗料の乗り方は同じではありません。
初心者がまず安定して進めやすいのはPLAの標準フローですが、加工のしやすさだけで見るとABSには強みがありますし、PETGは欠けにくさが活きます。
レジンはもともとの表面がきれいなぶん、洗浄と下地確認の精度がそのまま完成度に出やすい素材です。
比較の軸を整理すると、見ておきたいのは研磨しやすさ、割れやすさ、化学処理の可否、塗料との相性です。
同じ「サンディングしてサーフェイサーを吹く」という流れでも、力の入れ方や番手の入り方を少し変えるだけで、面の残り方が安定します。

素材仕上げの基本研磨時の感触パテの使いどころ化学処理塗料まわりの注意点
PLA手研磨+サーフェイサー削れるが脆い箇所は欠けやすい積層の谷や小さな欠けの補修に向く実用的な平滑化はしにくい下地を整えると安定しやすい
ABS手研磨+サーフェイサー、必要に応じてアセトン処理4素材の中でも扱いやすい部類面出し前の小傷や段差埋めに使いやすいアセトン蒸気処理が可能平滑化後はディテール確認が重要
PETG手研磨+サーフェイサーしなる感じがあり、削るよりならす感触サポート跡のえぐれ補修で有効アセトンは基本不向きサポート跡の荒れを整えてから塗ると安定
レジン洗浄→乾燥→必要部のみ研磨→サーフェイサー表面は滑らかで局所修正向きピンホールやサポート跡の点修正に向く洗浄は必須、平滑化より未硬化除去が先塗料の乗りは良いが洗浄不足が不良につながる

PLAの標準工程

PLAは印刷しやすく、初めて塗装前提で触る素材として扱いやすいのが利点です。
その一方で、細い突起やシャープな角には脆さがあり、削り方が強いと欠けや割れとして返ってきます。
なので工程そのものは素直でも、力加減だけは丁寧に寄せたほうが仕上がりが安定します。
基本は手研磨から入り、サーフェイサーで傷を見て、必要ならもう一度整える流れです。
番手の進め方は #400→#600→#1000 が標準的で、『KUWABARAの解説』でもこの並びが紹介されています。
PLAでは特に、#400で形を作りすぎないことが欠かせません。
積層痕を均したくなっても、平面は軽く往復、角は回数を減らすくらいでちょうどよく、サーフェイサーを吹いてから再度見るほうが失敗が少ないです。
筆者はPLAの小物やフィギュアを整えるとき、割れやすそうな部分だけは最初から「削る対象」ではなく「傷を増やさず整える対象」として見ています。
特に薄い袖口や細い髪先のような部分は、ペーパーを押しつけるより、指先で面を支えながら当てるほうが輪郭が残ります。
PLAは印刷のしやすさに対して、後処理では少しだけ繊細に扱う必要がある、というのが実感です。
塗料との相性は悪くありませんが、素地のままだと積層痕の影響を拾いやすいので、サーフェイサーの役割が大きい素材でもあります。
吹き付け距離の目安としては20〜30cmの例があり、厚く一気に隠すより、薄く重ねて傷を浮かせる使い方が向いています。
色は2〜3層の薄塗りにすると表情が整いやすく、下地で見えていた傷の再発見もしやすいのが利点です。

ABSの標準工程

ABSは印刷自体はPLAより気を使いますが、仕上げ段階では扱いやすい素材です。
研磨したときの反応が素直で、面を出したいときに手応えが読みやすいので、加工性の高さでは今でも魅力があります。
手研磨とサーフェイサーの基本フローに乗せやすく、ディテールの立て直しも比較的やりやすいのが利点です。
標準工程はPLAに近く、まずは手研磨で表面を整え、サーフェイサーで細かな傷を確認してから塗装へ進みます。
違いが出るのは、必要に応じてアセトン蒸気による平滑化を選べることです。
ABS限定の方法ですが、参考例として一部の外部解説では高純度アセトンを用い、短時間から様子を見る進め方が紹介されています。
ただし、濃度や処理時間はメーカーや素材、造形条件で差が出るため、必ず製品の取扱説明書(TDS/SDS)やメーカー指示に従い、テストピースで段階的に調整してください。
ABSは「削って整える」工程に素直についてきます。
PLAだと角が欠けそうで手が止まる場面でも、ABSは面のつながりを見ながら少し踏み込んで調整しやすいのが利点です。
逆に、アセトン処理まで使う場合は研磨よりも一気に表情が変わるので、仕上げの方向性を先に決めておくとブレにくい設計です。
艶を寄せたいのか、塗装前の下地を早く均したいのかで、使いどころが変わります。
塗料との相性も良好ですが、化学処理後は表面が見た目以上に変化していることがあるため、サーフェイサーでの再確認が効きます。
ABSは仕上げの選択肢が広い素材で、標準フローのままでもきれいにまとまりますし、さらに攻めた平滑化まで踏み込めるのが強みです。

PETGの標準工程

PETGはPLAより印刷条件に気を使う場面がありますが、ABSほど神経質ではなく、実用品にも使いやすいバランスの素材です。
一般的な印刷温度は230〜250℃、ベッド温度は60〜80℃とされることが多く、この少し粘りのある出力感が、後処理の手触りにもつながっています。
仕上げで重要なのは、割れにくいことと、削り感が独特なことを分けて考えることです。
PETGは弾力があり、PLAのようにパキッと欠けにくい反面、サポート跡の処理で「削れているつもりなのに面が曖昧になる」ことがあります。
もろいから崩れるのではなく、弾性があるぶんペーパーの当たり方が変わるからです。
そのため、標準工程は手研磨+サーフェイサーで問題ありませんが、当て方は軽めが基本です。
#400から入る場合でも、段差を落とすというより面をそろえる意識のほうが合っています。
筆者もPETGで角Rのある小物を整えたとき、最初はPLAと同じ感覚で#400を使って輪郭を少し甘くしてしまいました。
そこで削るつもりをやめて、面をならすつもりで軽く往復させるように切り替えると、角Rが崩れにくいまま輪郭を維持できたんです。
この素材は「よく削れるか」より「面圧をどこまで抑えられるか」のほうが結果に効きます。
サポート跡も一点をえぐるように攻めるより、周囲ごとならして必要なら埋めるほうがきれいにつながります。
化学処理の選択肢はABSほど明快ではなく、アセトンによる平滑化は基本的に向きません。
だからこそ、PETGは機械的な整面の精度がそのまま仕上がりに反映されます。
塗装前はサーフェイサーでサポート跡の残り方を見て、曖昧な凹凸だけを戻って直す流れが安定します。
欠けにくいので安心感はありますが、面を崩さない削り方ができると一段きれいに見える素材です。

レジンの標準工程

レジン(SLA系)はFDM素材とは前提が少し違います。
もともとの表面が滑らかで積層感も少ないため、最初から広範囲を強く削るより、洗浄、乾燥、局所修正、下地確認の順で進めるほうが理にかなっています。
見た目がきれいなぶん、未処理の部分や洗浄の甘さが塗装で急に目立つのが特徴です。
標準工程は、まずIPAなどで洗浄し、乾燥させてから、必要なところだけを #240〜#600 の範囲で整える流れです。
レジン系の現場例としては、荒整形に #240〜#320、その後に #400〜#600 へつなぐ進め方が使われています。
FDMのように全面を均し続けるというより、サポート跡、点状の凹み、段差の境目だけを短く触るほうが仕上がりが崩れません。
この素材は塗料の乗りが良いです。
だからこそ、洗浄と表面準備の差がはっきり出ます。
レジンは洗浄を丁寧にできたときだけ、最初の色が表面にすっと落ち着きます。
逆に未硬化レジンが少しでも残っていると、そこだけ落ち着きのない塗面になりやすく、この差は大きいです。
表面が最初から滑らかなので油断しやすいのですが、レジンでは「削る前の処理」がそのまま塗装品質になります。
サーフェイサーは微細な傷や欠陥の可視化に有効ですが、役割はFDMよりも「どこを直すかのマーキング」に近いです。
すでに面が整っている部分まで削り直す必要はなく、気になる範囲を狭く戻して、もう一度下地を見直すほうが形を残せます。
レジンは四つの中で最も表面品質のスタート地点が高い一方、その優位は洗浄不足ひとつで崩れやすい素材です。

塗装の手順|サーフェイサー・本塗装・トップコート

サーフェイサーのかけ方

塗装工程の中で、見た目を一段引き上げる分岐点になるのがサーフェイサーです。
役割は単なる下塗りではありません。
塗料の密着性を高めること、肉眼では見落としやすい細かな傷を浮かび上がらせること、そして本塗装の発色を安定させることが主な仕事です。
前の工程で表面を整えていても、サーフェイサーをひと吹きすると傷の流れやエッジの荒れが急に見えてくるので、ここで一度“仕上がりの地図”が見える感覚になります。
吹き方の基本は、対象から20〜30cm離して、薄く数回に分けることです。
1回で隠そうとすると、谷に溜まったり角がだれたりして、せっかく残したディテールまで鈍ります。
筆者も最初のころ、早く均一に見せたくて距離を15cm以下まで詰めたことがありますが、その瞬間に塗面がザラついてムラになり、修正に余計な手間がかかりました。
逆に20〜30cmを守って、表面にうっすら乗る程度を何度か重ねるだけで、見違えるほど落ち着いた肌になります。
これ、意外と知られていないんですが、サーフェイサーは「しっかり吹く」より「残さず薄く重ねる」ほうが結果が安定します。
厚塗りしないことも欠かせません。
サーフェイサーは傷を埋める万能材ではなく、傷を見つけて次の処置につなぐ層として使ったほうがきれいにまとまります。
1回目で気になる線や点が見えたら、そこだけ軽く戻して整え、再度ごく薄くかけ直す流れが効率的です。
FDMの積層痕でもレジンの微細欠陥でも、この“見つけるための一層”という考え方を持つと、無駄に塗膜を厚くしにくくなります。
図で入れるなら、ノズル先端と対象物の間に20〜30cmの間隔を示したイラストがあると理解しやすいのが利点です。
距離感は文章だけだと曖昧になりやすく、手元で再現しづらいからです。

本塗装の進め方

色を乗せる本塗装も、基本はサーフェイサーと同じく薄吹きの積み重ねです。
一般的には2〜3層の薄塗りで色層を作ると、隠ぺい力と表面の滑らかさのバランスが取りやすくなります。
1層目で完全発色を狙わず、少し透けるくらいから始めたほうが、色ムラや液だまりを抑えやすいのが利点です。
下地が整っていれば、重ねるごとに色が揃っていくので、焦って一気に乗せる必要はありません。
ここで効いてくるのが、塗装間の乾燥を守ることです。
各層の乾燥時間は製品表示に従い、表面が落ち着く前に次を重ねないようにします。
乾いていない層の上に急いで重ねると、見た目は塗れていても塗膜の中で不安定さが残り、ムラや荒れにつながりやすくなります。
筆者は急ぎたい場面ほど、1回ごとの吹き量をさらに減らして待つようにしています。
そのほうが結果的にやり直しが少なく、完成までが早いです。
形状によって吹き方を変える意識も欠かせません。
凹み、裏側、パーツの合わせ目近くは塗料ミストが回り込みやすく、思った以上に色が乗ります。
平面と同じ感覚で正面から吹き続けると、角の奥だけ濃くなったり、エッジの片側に粒子が溜まったりします。
そういう場所は、距離を少し意識しつつ、角度を振って一方向から当てすぎないほうが整います。
狭い場所を塗るときほど、近づいて細かく当てたくなりますが、そこを我慢して薄く回すと面がきれいです。
図版を入れるなら、色層が1回でベタッと乗るのではなく、薄い層が2〜3枚重なって発色していくレイヤーイメージ図が相性の良い構成です。
塗装が“色を塗る作業”ではなく“膜を育てる工程”だと伝わりやすくなります。

トップコートと質感コントロール

トップコートは保護膜であると同時に、作品の印象を決める仕上げの層でもあります。
つや消し、半光沢、光沢の違いで、同じ色でも見え方は変わります。
立体物の質感を落ち着かせたいならつや消し、樹脂感や塗装感を残したいなら半光沢、深い反射を出したいなら光沢という使い分けがしやすいのが利点です。
機能面では、トップコートを入れることで擦れや指紋から表面を守りやすくなり、色層の持ちも安定します。
とくに手に取る小物や展示中に触れやすい作品では、色だけで終えるよりも表面の落ち着きが出ます。
筆者は雑貨試作で触れる前提のものを作ることが多いのですが、トップコートを通した面は、単に丈夫になるだけでなく、視覚的にも“完成品らしさ”が出やすいのが利点です。
ここでも厚く一度に決めるより、薄く重ねて狙った質感に近づけるほうが失敗しにくい設計です。
特につや消しは、吹き方が荒いと白っぽく粉を吹いたように見えることがあり、光沢は溜まりすぎると反射が不均一になります。
本塗装の色がきれいでも、トップコートの乗せ方が雑だと表情が崩れるので、質感づくりの最終調整として丁寧に扱う価値があります。

💡 Tip

つやの選択に迷うときは、ディテールを強調したい造形にはつや消し、面の滑らかさを見せたい造形には半光沢か光沢を合わせると、形の魅力が出しやすいのが利点です。

塗料タイプ別の向き不向き

塗料は色だけでなく、扱いやすさや下地への影響が違います。3Dプリント品で使い分けるなら、まずは性格の差を押さえておくと工程を組みやすいのが利点です。

塗料タイプ向いている場面注意したい点
水性アクリル室内作業で扱いやすさを重視したいとき、臭気を抑えたいとき乾燥後の強さや重ね塗りの癖は製品ごとに差が出やすい
ラッカー乾きの速さや塗膜の強さ、シャープな仕上がりを狙いたいとき溶剤が強く、下地や先に塗った層を攻撃しやすい
エナメルスミ入れ、ウォッシング、拭き取りを活かした表現をしたいとき乾燥が遅めで、広い面の主塗装にはテンポが合いにくい

水性アクリルは扱いやすく、臭気も比較的弱いので、塗装工程に慣れていない段階でもコントロールしやすい部類です。
色の確認をしながらゆっくり進めたい小物には相性が良く、失敗したときの心理的なハードルが低いです。
下地が整っていれば十分きれいに仕上がります。
ラッカー系は乾きが速く、シャープで強い塗膜を作りやすい反面、溶剤の強さがはっきり出ます。
サーフェイサーや色層の重ね順が雑だと、下の層を荒らしたり、エッジまわりの表情を乱したりしやすいのが利点です。
仕上がりのキレは魅力ですが、下地攻撃のリスクを理解して使う塗料だと考えたほうが扱いやすいのが利点です。
エナメル系は乾燥が遅めなので、全面を一気に仕上げる主役というより、ウォッシングや拭き取りを使った陰影表現で強みが出ます。
凹部に流して立体感を出したり、表情を足したりする用途では便利です。
反対に、広い面のベースカラーをテンポよく積み上げたい場面では、もどかしさが出やすいのが利点です。
素材との相性も見逃せません。
PLA、ABS、PETG、レジンは前述の通り表面の性格が違うので、同じ塗料でも食いつき方や荒れ方に差が出ます。
そこで有効なのが、本番前にテストピースで塗りの様子を見ることです。
小さな端材や同素材の余りで、サーフェイサー、本塗装、トップコートまで一連で試すと、溶剤の強さや発色の出方が把握しやすくなります。
筆者も新しい組み合わせを試すときは、作品そのものより先に小片へ吹いて、どの層で表情が変わるかを見てから本体に入るようにしています。
これだけで、完成直前の崩れ方が減ります。

ABSのアセトン平滑化は有効か|効果と安全性

アセトン平滑化の仕組み

ABSのアセトン平滑化は、表面だけをわずかに溶かして積層痕をならす後処理です。
紙やすりで山を削って整えるのとは違い、蒸気に触れた外層がやわらかくなり、細かな凹凸が自然につながっていくため、光の反射が均一になって“成形品らしい面”に近づきます。
見た目の変化が大きいので、塗装前の下地づくりとしては有効です。
この方法が実用的なのはABSだけという点です。
PLAは印刷しやすく扱いやすい反面、脆さがあり、仕上げは手研磨とサーフェイサー中心で進めるのが基本です。
PETGは弾力があって割れにくく、実用品向きですが、アセトン処理は基本的に向いていません。
サポート跡が荒れやすいので、その部分を丁寧にならすほうが仕上がりは安定します。
レジンはそもそも表面が滑らかで、塗料の乗りも良い素材です。
ただし、きれいに見えるぶん洗浄不足や表面準備の甘さがそのまま塗装不良につながるので、平滑化よりも洗浄と下地確認の優先度が高いです。
ABS自体は研磨もしやすく、素材別に見ると後処理の自由度が高い部類です。
表面を紙やすりで整えてからサーフェイサーを重ねる普通の仕上げもできますし、積層痕を大きく弱めたいときはアセトン蒸気という選択肢も取れます。
筆者は、広い平面を持つケース類やカバー類ではこの差が特に大きいと感じています。
ヤスリだけで追い込むと時間がかかる面でも、蒸気処理をうまく使うと一気に見栄えが変わります。
一般的な現場の目安としては高純度の溶剤が使われることがありますが、具体的な濃度や処理時間はメーカー指示に従う必要があります。
まずは短時間のテスト(数分〜数十分、造形条件に依存)から様子を見て、段階的に調整してください。
必ずメーカーのTDS/SDSを確認してから実施しましょう。

安全装備と作業環境

この処理は見た目の変化が大きい一方で、安全面の優先度が高い工程です。
必要なのは強制換気、火気厳禁、静電気対策、保護具の着用です。
保護具は少なくともニトリル手袋、保護メガネ、有機溶剤用マスクを前提にしたほうが安心です(ニトリル手袋の耐薬品性や適切なグレード、交換タイミング等の詳細は各製品のSDSを参照してください)。
やり方としては、加熱式のDIYは避けて、常温の蒸気方式で進めるのが基本です。
密閉できる容器の内側にアセトンを含ませた紙を配置し、ABSパーツ本体は液に触れないよう台の上に置きます。
つまり、液体に浸すのではなく、容器内にたまった蒸気で表面を均一にやわらかくしていく形です。
熱源を使う方法は危険が増えるわりに、家庭作業ではコントロールのしやすさも上がりません。
図で補足するなら、密閉容器、アセトンを吸わせた紙、中央の台、その上の被写体という配置がいちばん伝わりやすいのが利点です。
そこに熱源なしを明記し、あわせて火気厳禁と換気必須の警告ボックスが入ると、手順と危険ポイントが一度に理解しやすくなります。
筆者はこの工程を“仕上げ”というより“溶剤を使った成形の再調整”として扱っています。
サーフェイサーやトップコートの延長線で考えると油断しやすいのですが、実際はもっと慎重に条件を切るべき作業です。
安全が確保できる環境で、短時間のテストから入るほうが結果も安定します。

処理時間とディテール保持のバランス

アセトン平滑化で難しいのは、積層痕を消したい気持ちと、形を残したい気持ちがぶつかることです。
処理が進むほど表面はつながってきれいになりますが、そのぶん角や細いモールドは甘くなります。
特に、面取りの少ないシャープなエッジ、小さな文字、ネジ穴まわりの段差は、光沢化と引き換えに輪郭がやせるのではなく、むしろ“太って丸くなる”方向に変化しやすいのが利点です。
この見極めには、まずテストピースで光沢化の進み方を見るのがいちばん確実です。
同じABSでも、造形の厚みや面積で見え方が変わるので、本番品と近い壁厚や角形状を持つ小片を一緒に入れておくと判断しやすくなります。
本番は一度で決めにいかず、短時間処理して乾燥させ、必要なら再実施する分割アプローチのほうが失敗が少ないです。
筆者もABSのギアカバーで、一度20分通しで処理したことがあります。
面の積層感は落ちたのですが、角がわずかに丸まり、機械部品らしいシャープさが少し後退しました。
その後は10分処理して乾燥、もう一度10分という分け方に変えたところ、面の落ち着きは得つつ、エッジの印象は保てました。
実際に試してみたところ、通し時間の長さより、途中で止めて観察できる余地があるほうが完成度を上げやすいのが利点です。
研磨と組み合わせる考え方も有効です。
大きな面はアセトンで整え、局所の荒れや残したい角は事前に軽く面を出しておくと、溶剤処理の負担を減らせます。
ABSはもともと研磨しやすいので、全部を化学処理に任せるより、手作業で形を作ってから蒸気で表情を整えるほうが、狙った見た目に寄せやすいのが利点です。

よくある失敗と回避策

いちばん多い失敗は、一度でつるつるにしようとして処理しすぎることです。
積層痕が見えている段階では、つい時間を足したくなりますが、変化は後半ほど大きく見えることがあります。
表面が濡れたような強い光沢になったら、すでに進行は先まで来ています。
そこで粘ると、角のだれや穴の縁の崩れが出やすいのが利点です。
短時間で止めて乾燥後に見ると、想像以上に整っていることがよくあります。
次に起きやすいのが、液だれや接触跡です。
被写体が容器の壁や濡れた紙に近すぎると、蒸気ではなく液の影響が局所に出て、片側だけ溶けたようなムラになります。
台の高さをきちんと取り、どこにも触れない配置にすると防げます。
密閉容器の中でパーツを安定して置くことは、見た目以上に欠かせません。
乾燥不足のまま触って跡を付けるのもありがちな失敗です。
処理直後の表面は見た目以上にやわらかく、指先の圧や置き方で簡単に曇りや痕が残ります。
取り出した直後に完成を確認したくなりますが、その時点ではまだ“仕上がったように見える途中段階”です。
筆者はこの工程の後だけは、造形物を作品ではなく半乾きの塗膜として扱う感覚を持つようにしています。
素材の取り違えも見逃せません。
ABSでは有効でも、PLAやPETGに同じ発想を持ち込むと、期待した平滑化にはつながりません。
PLAは印刷しやすいかわりに脆さがあり、仕上げは削りすぎによる欠けにも気を配る必要があります。
PETGは割れにくく実用向きですが、サポート跡の荒れが残りやすいので、その処理を丁寧にするほうが見栄えに直結します。
レジンは最初から滑らかな面を得やすく、塗装映えもしやすい素材ですが、洗浄と表面準備が甘いと美点がそのまま弱点になります。
素材ごとに最適解が違うので、ABSの成功体験をそのまま横展開しないほうが、仕上げ全体の精度は上がります。

ℹ️ Note

ABSのアセトン平滑化は、広い面をきれいに見せたいときほど効果的です。反対に、細いモールドや角の情報量で見せる造形では、短時間の分割処理か、研磨主体のほうが形を守りやすいのが利点です。

失敗例と対処法|塗料が乗らない・ベタつく・傷が消えない

症状別チェックリスト

塗装トラブルは、見えている症状が似ていても、原因がまったく違うことがあります。
初心者のうちは「塗料の種類が悪かった」と思いがちですが、実際には下地に残った油分や研磨粉、サーフェイサー前の傷の見落とし、乾燥不足のままの重ね塗りが絡んでいることが多いです。
筆者も初期のころは、色がうまく乗らないと塗料側を疑っていましたが、振り返ると表面準備で決まっていたケースがほとんどでした。
特にFDM品は、削ったあとに細かな粉が谷や角に残りやすく、見た目にはきれいでも塗膜の密着を邪魔します。
レジンも同様で、こちらは研磨粉というより洗浄不足や残留物が不良の引き金になりやすいのが利点です。
見た目の症状から逆引きすると、対処が早くなります。

症状主な原因まず見るポイント対策
塗料が弾く油分の残り、未洗浄、研磨粉の除去不足指紋が付きやすい面、削り粉が溜まる溝、洗浄直後のムラ中性洗剤などで表面を整え、乾いた後に再塗装する
塗膜がいつまでも柔らかい、ベタつく乾燥不足、素材に合わない塗料、溶剤相性厚塗り部分、重ね塗り直後の面、PETGや一部樹脂塗装を止めて硬化を待ち、必要なら削り戻して塗料を変更する
傷が消えない番手飛ばし、深い傷の残り、サーフェイサー前の見落とし斜めから光を当てた面、曲面の筋、サポート跡一段戻して研磨し直し、サーフェイサーで再確認する
表面がザラつく、荒れる厚塗り、吹き付け距離が近すぎる、1回で隠そうとする塗り方エッジ付近の溜まり、霧が粗く乗った面薄く複数回に分け、面を軽く整えてから塗り直す
一部だけ縮れる、侵されたように見える強い溶剤との相性不良PETG、一部レジン、局所だけ異常が出た部分強溶剤を避け、テストピースで確認した系統に切り替える

この中で見落としやすいのが、傷が消えないのに塗装回数で隠そうとするパターンです。
塗膜は色を付ける層であって、深い研磨傷そのものを消す層ではありません。
サーフェイサーを吹いた瞬間に筋が浮いて見えるなら、その時点でまだ下地工程です。
ここを無理に進めると、色が乗ったぶんだけ傷が見やすくなることがあります。
PETGと一部のレジンは、ここで特に慎重に見たい素材です。
PETGはしなやかで割れにくい反面、溶剤に対して素直に振る舞わないことがあり、強溶剤系を乗せたときに表面だけでなく内部まで影響が残ることがあります。
筆者もPETGで、色が乾いたように見えるのにいつまでも柔らかい状態にぶつかったことがあります。
そのときは強い溶剤を使うのをやめて水性アクリルに切り替え、下地を#600で軽く当て直したところ、一気に安定しました。
こういうケースでは、塗り重ねるより素材と塗料の組み合わせを疑うほうが早いです。

💡 Tip

PETGや一部樹脂で塗膜の異常が出たときは、塗り方より先に溶剤相性を見ます。強溶剤ラッカーで不安定なら、テストピースで挙動を見たうえで、水性アクリルやプラ用プライマーを軸に組み直すと立て直しやすいのが利点です。

乾燥・硬化の見極めポイント

塗装で厄介なのは、乾いたように見えることと、硬化していることが別だという点です。
表面が触れそうでも、下の層に溶剤が残っていると、次の塗膜がそれを再びゆるめてしまいます。
これが層間溶解で、未乾燥の状態で重ねると、下層が持ち上がったり、柔らかいまま閉じ込められたりして、ベタつきやしわの原因になります。
本塗装は2〜3層の薄塗りが一般的ですが、この「薄塗り」が意味するのは、単に垂れ防止だけではありません。
各層の溶剤を抜きやすくして、次の層に耐えられる膜を作るという意味もあります。
逆に、1回で発色を出そうとして厚く乗せると、表面だけが先に触れる状態になり、内部の抜けが遅れます。
すると、その上に次を重ねたときに塗膜全体が落ち着かなくなります。
見極めで役立つのは、見た目だけでなく触感の変化です。
指で押すのではなく、目立たない端部にごく軽く触れたとき、冷たく湿った感じが残る、わずかに吸い付く、爪が入りそうな柔らかさがあるなら、まだ次工程には早いです。
平滑で、表面だけが滑る感じではなく、膜として落ち着いた感触になってから先へ進むほうが、結果として早くきれいに仕上がります。
傷の確認でも、乾燥不足は判断を狂わせます。
半乾きのサーフェイサーは表面がなじんで見えるので、小傷が埋まったように錯覚しやすいのが利点です。
ところが乾き切ると筋が戻って見えることがあります。
筆者はサーフェイサー前後で形を見比べるとき、強い光を横から当てて、濡れたような見え方ではなく影として残る傷があるかを見ます。
この見方をすると、サーフェイサー前の見落としが減ります。

やり直しの手順

失敗したときは、上から何かを足してごまかすより、どの層で問題が起きているかを切り分けるほうがきれいに戻せます。
塗料が弾いた、ベタついた、傷が消えないといった症状は、どれも再塗装で救えますが、対処の順番を間違えると症状を広げやすいのが利点です。
塗膜が柔らかい、あるいはベタつく場合は、まず重ね塗りを止めます。
ここでさらに塗ると、下の層がまた溶けて状況が悪化します。
表面が不安定なままなら、無理に磨かず、触って跡を増やさない状態で落ち着かせます。
そのうえで、表面だけを軽くならして済むのか、下地まで戻したほうが早いのかを見ます。
PETGや一部レジンで溶剤相性が原因のときは、同じ系統の塗料で塗り直さないのが欠かせません。
やり直しは、次の順番にすると失敗が増えにくい設計です。

  1. 症状が出た層で作業を止め、表面をいじりすぎないようにする 2. ベタつきや縮れがある部分を観察し、素材との相性不良か、乾燥不足かを切り分ける 3. 表面が落ち着いたら、荒れた部分を必要最小限だけ研磨して均す 4. 研磨粉や油分を残さず取り除く 5. サーフェイサーを薄く入れて、傷や段差が残っていないかを確認する 6. 問題がなければ、素材に合う塗料で薄く塗り直す 傷が消えないケースでは、塗膜を削ること自体は怖くありません。怖いのは、傷の底まで届かない研磨を何度も繰り返すことです。筋が見えているなら、番手を一段戻して形を崩さない範囲で傷の深さをそろえ、その後に細かくしていくほうが早いです。サーフェイサー前に残っていた傷は、再塗装のたびに目立ちやすくなるので、ここだけは塗装工程ではなく研磨工程として扱うと判断しやすいのが利点です。

表面が荒れた場合も同じで、厚塗りや距離不足でできたざらつきは、色を足すより面を整えたほうが収まりやすいのが利点です。
吹き付け面が粗いまま重ねると、その凹凸が次の層にも転写されます。
サーフェイサーの吹き付け距離としてよく使われる20〜30cmという目安は、こうした荒れを抑える意味でも扱いやすい範囲です。
距離が近すぎると溜まりやすく、遠すぎると乾いた粒が乗りやすいので、再塗装では特に一定に保つと結果が安定します。
実際に試してみたところ、失敗のリカバリーで効くのは特別な裏技ではなく、一段戻す勇気でした。
削り粉を落とし、サーフェイサーで傷を見つけ、薄く戻す。
この基本を崩さないほうが、最終的な見栄えはむしろ上がります。

迷ったらこの手順で進める|初心者向け標準レシピ

素材が分かったら、まずは本番品ではなく小さなテストピースか目立たない裏面で手を動かしてみてください。
筆者はこの回り道が、実は一番早く仕上がりに近づく方法だと感じています。
#400から#600、#1000へ進んだときの削れ方と手触りの変化を体で覚えると、本番で「ここは止める」「ここはもう一段進める」の判断が速くなります。
家庭で進めるなら、無理に強い処理を足すより、素材に合う標準フローをそのまま丁寧になぞるほうが安全で失敗も増えません。

PLA標準フロー

初心者が最初の一本として選びやすいのは、やはりPLA基準の進め方です。
余計な分岐が少なく、見た目を整えるまでの流れが素直だからです。
基本は、サポートを外したら表面の大きなバリだけを整え、#400、#600、#1000の順で段階的に均します。
深くえぐれた段差がある部分だけパテを使い、それ以外は削りとサーフェイサーで整える考え方のほうが、面が崩れにくくなります。
研磨のあとに粉をしっかり落とし、サーフェイサーを薄く入れて傷を見ます。
吹き付け距離は20〜30cmを目安にすると、近すぎて溜まる失敗や、遠すぎてザラつく失敗を避けやすいのが利点です。
ここで傷が見えたら、色に行かずに戻るのがコツです。
表面が落ち着いていれば本塗装は薄く2〜3層、発色を一気に取りにいかず膜を育てるように重ね、そのあとトップコートで質感を整えます。
家庭での標準レシピとしては、これが一番ぶれません。

ABS標準フロー

ABSは基本の流れ自体はPLAと大きく変わりません。
サポート除去から研磨、粉の除去、サーフェイサー、色、トップコートまでを同じ骨格で進めて大丈夫です。
違いになるのは、積層感をさらに弱めたい場面で、手研磨に加えてアセトン蒸気を選べることです。
この追加手段を使うなら、『RapidDirectの解説』で示されているように、99%以上のアセトンを使い、処理は10〜30分から短時間で様子を見る進め方が扱いやすいのが利点です。
最初から長く当てるより、短く試して表情の変化を確認したほうがディテールを残しやすいのが利点です。
換気を確保し、火気は近づけず、保護具を着けることが前提になります。
家庭で安全寄りに判断するなら、ABSでもまずは手研磨とサーフェイサーを軸にして、アセトンは「積層がどうしても気になるときの追加策」として後ろに置くのが無難です。

ABS Acetone Smoothing: Methods, Materials, and Practical Tips www.rapiddirect.com

レジン標準フロー

レジンは見た目がきれいなぶん、そのまま塗れそうに見えますが、実際には洗浄の精度が仕上がりを左右します。
標準フローは、IPAなどで洗浄し、表面を乾かしてから研磨に入る順番です。
ここを急ぐと、塗膜トラブルが後から出やすくなります。
研磨は#240〜#320でサポート跡や局所の段差を整え、そのあと#400〜#600で傷を整理します。
FDMより細かい面が出やすいので、広い面を削り込むというより、必要な場所を的確に直す意識が向いています。
そこからサーフェイサーで微細な傷を見て、本塗装を2〜3層、トップコートで締める流れです。
レジンは化学的に溶かして平滑化する発想ではなく、洗浄と乾燥を最優先に置いたほうが結果が安定します。

数値チートシート

迷ったときは、次の順でそのまま進めれば大きく外しません。家庭で安全寄りに進める基準としても、この流れを基準線にしておくと判断しやすいのが利点です。

  1. まず素材を確認する 2. 小物や端材で研磨の感触を練習する 3. 研磨後の粉と油分を取り除く 4. ABS以外にはアセトンを使わない 5. 安全面を確認してから塗装に入る 数値だけ抜き出すと、FDMの標準研磨は#400→#600→#1000、レジンは#240〜#320→#400〜#600、サーフェイサーは20〜30cmの薄吹き、本塗装は2〜3層が基準です。ABSのアセトン蒸気を使う場合は99%以上で、処理は10〜30分から始めると様子を見やすくなります。紙に印刷して作業台に置ける一枚のチェックリストにしておくと、手順の飛ばしや戻り忘れを防ぎやすいのが利点です。

数値だけ抜き出すと、FDMの標準研磨は#400→#600→#1000、レジンは#240〜#320→#400〜#600、サーフェイサーは20〜30cmの薄吹き、本塗装は2〜3層が基準です。
ABSのアセトン蒸気を使う場合は高純度の溶剤が用いられる例が報告されていますが、各メーカーの指示(TDS/SDS)に従ってください。

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